宿毛市立宿毛歴史館

ふるやのあまもり

その1 昔、昔のことでした。

山の奥の一軒家(いっけんや)に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

二人は一頭の馬をわが子のようにかわいがって育てていました。



その2 ある日の夕方、道にまよった旅人が、宿(やど)をかしてくださいといってたちよりました。

おじいさんとおばあさんは、喜んでとめてあげることにしました。



その3 晩ごはんのあと、ろばたでいろいろと話がはずみました。

「こんな山の中で、さみしいことはありませんか。」

と、旅人がききました。

『きつねや狸(たぬき)もでてくるだろうに』

と、旅人は思ったのでしょう。



その4 おじいさんは言いました。

「別にさみしいこともないが、たった一つだけ困ることがあって、それがおそろしいのです。」

と。

丁度そのとき…



そ51 おじいさん、おばあさんの大事な馬をとって食べてやろうと、悪者の狼(おおかみ)がしのびよってきていました。

狼の耳に、しぜんとおじいさんの話す声がはいりました。



その6 狼は考えました。

『この世の中におれさまよりこわがられるものがあるはずない。』

ところがおじいさんは、

「何を言うても、ふるやのあまもりほど、おそろしいものはありません。」

と話すのです。



その7 聞き耳をたてていた狼は、自分よりこわがられている『ふるやのあまもり』という奴は、一体どんな奴だろうと思いました。



その8 あまもりのことで頭の中が一杯になっている狼のうしろから、まさか狼が先にきているとはつゆしらぬ泥棒が、 これもまた、おじいさんおばあさんの大事な大事な馬をぬすもうとして、そろりそろりと近寄ってきたのです。



その9 その手が、狼の尻尾(しっぽ)にさわりました。

泥棒はてっきり馬の尻尾だと勘違いして、その尻尾をにぎりました。にぎられた狼は、はっとしました。

『これはてっきり、あまもりにちがいない。大変だ。逃げなくては。』
と思った途端(とたん)力いっぱい足をのばして走りだしました。



その10 逃がしてなるものか、と泥棒は、その尻尾をぎゅうっと強くにぎりしめました。

夢中で走る狼。しがみつく泥棒。

そのうち、木の根や石ころで体中さんざん打たれた泥棒は、気を失って手をはなしました。



その11 一山越した向こうまで行って、狼はやっとあまもりの手がはなれたことに気がつきました。

『なんと、あまもりというものはしつこいものだろう。あんなもののいる家には二度とと近づくものではない。』

と、狼は身ぶるいしました。



その12 正気にかえった泥棒も…

『なんと考えてみても、変な馬だった。あんな馬に二度と手をだしたら、命がなくなる。』

と、これも身ぶるいしました。



その13 それからというもの、狼も泥棒も、おじいさんおばあさんのお家には、近づきませんでした。

おじいさんの話したふるやのあまもりは、古いお家の屋根がいたんでも、年をとって思うように直すことができなくて、 雨が降るとあちこちもってくるので、それが一番おそろしいということだったのです。



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