宿毛市立宿毛歴史館

乳地ぞう

その1 山北づけの川と草木づけの川が出合う所に、県境の橋がかかっています。
昔からここも出合いと呼ばれてきました。

出合いの奥のいでん駄馬の人が、ある日川原の草むらの中で小さな石のお地ぞうさんをひろいました。

『家に置くのもなんだかもったいないが、どこかいい場所があればおまつりしてあげたい』
そう思いながら何日かすぎました。

ある日のこと、川向こうの谷にはいりました。ふと見ると大きな岩場の上に椎(しい)の木がうっそうと茂っています。



その2 「これはいい場所があったものだ。」
と早速家からお地ぞうさんをつれて来て安置しました。

家からはちょっとあいがあったが、不便なほどの距離でもないので暇をみてはおまいりに出かけました。 それを知った近所の人達も、通りがかりにお参りするようになりました。

ところがそのうち誰からともなしに、『あそこのお地ぞうさんにおまいりしたら、不思議なことにお乳がたくさん出るようになった』 という評判がたちました。

その気でおまいりすれば、自然と効き目もでてくるのでしょう。 評判が評判を呼んで、ずい分遠方からも、家一軒もない谷間を訪れる人がふえて来ました。



その3 お乳がいっぱい出るようになったお母さんたちは、お礼に小さなのぼりや鳥居を作ってお供えしました。

お地ぞうさんのお祭り日にはたくさんの人々が集まって、それはそれはにぎやかだったと言うことです。

山里の人々のとっては、そんな日が一番楽しい日だったことでしょう。



その4 そうした心豊かな暮らしであれば、お乳も益々よく出るようになったことと思われます。

おかげで生まれた赤ん坊たちも、元気ですくすく育っていったということです。

今はそれらしい姿もみあたらず、おまいりする人の姿もないようです。

それでも誰かが気をつけているのでしょうか、岩場の前や小道はきれいになっていました。小さいブリキの鳥居 がいくつか岩の上に残っていました。

椎の大木がその岩場を守るように枝をひろげています。



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