宿毛市立宿毛歴史館

山犬の供

その1 ある晩、可愛い男の子が生まれました。
初めての孫でした。おばあさんはうれしくてたまりません。いっときでも早く、身近な人達だけにでも知らせたくて たまりません。
とうとう朝になるのがまちきれず、夜中に家をでかけました。あとのことはお嫁さんのお母さんがしっかり引き受けて くれました。

暗い山道もいっこうにこわいことはありません。わくわくした気持ちで一坂越えました。
ふと前の方を見ると、青い星のような光が二つ、四つ、六つと見えます。おばあさんはとっさに思い出しました。
赤日(あかび)の夜の山道では、必ず山犬が出てくるということを、そのまたおばあさんから聞いていたのです。



その2 そんなとき、こわいと思って追いはらったり、あわてて逃げだしたりすると、必ず仕返しにやって来たり。かみつかれたり するけれども、
「赤のご飯を食べさすから、お供になってついて来い。」
と言うと、横になったリ先になったりして、その人を守ってくれるということも聞いていました。

そこで早速おばあさんは、その山犬達に
「お供になってついて来い。」
と言いました。

不思議なことに、何匹もの山犬達は声もたてずに静かにおばあさんの後先を歩き始めました。
おばあさんは夜のしらじらと明ける頃、近まわりの親類(しんるい)をひとまわりして帰って来ることが出来ました。



その3 早速、小豆をたくさん入れた赤飯をたいて山犬達にたらふく食べさせてやりました。
食べおわった山犬達の姿は、いつのまにか一匹二匹と消えて行きました。

赤ん坊が生まれたようなうれしいときは赤日であり、人がなくなったときは黒日と呼んできました。
山で生活する人達は赤日のあいだ仕事を休むのが普通です。火を使う炭焼きなどは特別に用心したものです。



その4 黒日もそうですが、三日か七日は休みました。 それというのが、赤日に仕事をしていると、思わぬ災難が必ず起こるというのです。

そうした体験を持つ人はたくさんおりますが、赤日の山道で災難にあうことのないように、人を守るのが山犬達の 仕事の一つだったのかもしれません。
ですから、追いはらったり、逃げたりすると怒って大変なことになるのでしょう。



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