宿毛市立宿毛歴史館

いのりの山のいたずら狐

その1 狐のこん助はいのり山から宿毛の町を見おろしていました。
町のまわりは田んぼです。田んぼのあいだに二筋の流れがありました。その向こうには大きな川が見えました。
二筋の流れのすそは大きな沼になって、おいしい魚がたくさんすんでいそうです。

町の西側にも池が見えます。こん助は考えました。
途中にあまり人家もなし、夜になったらあの池まで行ってみよう。

ゆっくりと昼寝をしたこん助は山をおりました。 人家のあかりも消えました。時々遠くで犬が鳴くが、こん助に向ってではなさそうです。町はもうすぐそこでした。 ふうっとあひるの匂いが風に乗ってこん助の鼻をくすぐりました。



その2 「これはしめた。池にはご馳走があるぞ。」
こん助はよろこびました。池のそばにはあひるの小屋がありました。入り口の戸に脚をかけると、なんとなくすうっと あきました。これ幸いと早速にあひるをくわえたこん助は、山手の丘にめったに人の来ることない大きな家のあることを 知っていて、じるい田んぼもなんのその、まっすぐそこまで走りました。

あくる朝そのことに気づいたあひるの主人は、どうも犬ではなさそうだと思いました。
猟師の人達も見に来ました。
このあし跡は狐のものだということになり、その晩から見張りが始まりました。
一晩休んだこん助は、あひるの味を思い出しまたまた出かけて行きました。



その3 静かな月夜の晩でしたが、そのお月さまがこん助にとって不幸のもとになったようです。
家のかげから大きな音がして、こん助の体の中にとってもない熱いかたまりがとび込んで来たのです。
こん助は力一杯逃げました。体の力がどんどん抜けていくのが判ります。
やっと丘の家まで着きましたが、それから先は一歩もうごくことが出来ません。
朝になって床下にうずくまるこん助を猟師達が見つけました。

五十年余りも昔のことですが、それからこちら宿毛の近くで狐の話をきかなくなりました。



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