宿毛市史【近代、現代編-農業-戦後の農業】

農業基本法と構造改善事業

32年度の『農業白書』は、今後の農業発展をはかる上においての基本的な課題を示すものとして  @農家所得の低さ  A食糧供給力の弱さ  B国際競争力み弱さ  C兼業化の進行  D農業就業構造の劣弱化という5つをあげて、これに対応することを要請されており、35年8月21日には、農林漁業問題調査会が「農業の基本的問題と基本対策」と題して政府に答申をした。この答申では、零細な農耕と零細土地所有という日本の農業構造を改善することが、農業政策の基本的課題であるということを指摘し「農地法」に固執する農地政策に対する批判的な見解を提示した。これをうけて36年6月12日「農業基本法」が公布され  @所得の均衡  A生産性の向上  B構造の改善の3つの対策の方向が打ち出された。
この農業基本法成立の背景をなすものとしては、朝鮮動乱後我が国工業が急成長をとげたため、輸出の伸長を図ろうとしたが、そのためには、貿易自由化の必要を生じ、財界からの強い要請などがあったこと、MSA協定によるアメリカよりの余剰農産物の買い付けがあったことなどから農産物価格が国際的競争力をつける必要に迫られたこと、他産業との所得格差が生じたこと、わが国農業が小規模経営で、穀物生産などには限界があり、世界の農業とたちうちしていくのには農業経営の大型化、近代化の必要を生じたこと、経済界の高度成長に伴って雇用が増大し出稼ぎ兼業などが進み、農業者が農外収入にたよるようになってきて、食糧供給力が弱くなったことなどである。
このようなことから、適地適作的な考え方の上にたった、国際分業論が叫ばれたりしたのであった。
この「農業基本法」に基づいて行われたのが、農業構造改善事業であった。まず第1次(36年から46年まで)改善が実施されたのであるが、それは「農業技術の革新と、農業生産の選択的拡大を図りつつ、自立経営の育成と、協業の助長に資する。」ということが目的で、30アールの大区画圃場整備や、大型トラクターの導入、集団的な樹園地造成や、ハウス団地、選果、集荷場の建設など、土地基盤の整備と経営近代化施設の導入を組み合せて進められた。高知県下では31市町村、62地区で事業が行われ、農作業の省力や主産地をつくることなどに効果があった。
宿毛市で行われた圃場整備事業はつぎのとおりである。
    圃場整備と水田総面積との対照((昭51.9現在)
町村名 農 委 推 定
水田面積(ha)
 整 備 済 
(ha)
 今後の計画 
(ha)
宿 毛 543 22 122
小筑紫 189 43 40
橋 上 114 42 10
平 田 273 119
山 奈 310 185 35
沖の島
1,430 42 207
    圃場整備の終った地区別面積
町 名 地区名 面 積(ha) 実 施 年 度
平 田 戸 内 63 自27〜至29
平 田 戸 内 43〜  47
平 田 黒 川 推定 47 43〜  47
山 奈 山 田 128 43〜  47
山 奈 芳 奈 57 43〜  47
小筑紫 伊与野 43 43〜  47
宿 毛 中 角 17 45〜  48
宿 毛 和 田
(小田方
45〜  48
橋 上 橋 上 31 45〜  48
橋 上 平 野 11 45〜  48
  411    
    圃場整備の今後の計画
町 名 地区名 面 積(ha) 着 工 予 定
山 奈 西竹石
(大字山田)
20 50年度
宿 毛 二 宮 38
宿 毛 和 田 55
宿 毛 坂ノ下 14
小筑紫 福 良 30 52年度
小筑紫 小三原 10
山 奈 天 神
(大字山田)
15 53年度
橋 上 神 有 10
宿 毛 山 北 15 54年度
  207   
農林綜合整備モデル事業
実施地区 (山奈町、平田町)
実施年度 昭和49年から52年
総事業費 約10億円
圃場整備 20ヘクタール
農道整備 22,228メートル
農業用排水施設 3,115メートル
農業集落道整備 14,957メートル
農業集落排水施設整備 3,379メートル
営農飲雑用水施設整備 3か所
用地整備(公園等) 20,800平方メートル
集落防災安全施設整備 36か所
農業集落環境管理施設 1か所
農林環境改善センター整備 1か所
農村公園施設整備 7か所
農作業準備休養施設 3か所
    構造改善事業に伴う農業施設
施 設 名 新設年度 棟数 広  さ 能  力
育苗センター 昭和47   472.5u 水稲200ha
ライスセンター 48 712.5u 60K入
10,000俵
低温貯蔵庫 48 2,250u   
次に宇須々木地区が、40年より3か年で柑橘園整備事業を行ない、農道、消毒、灌水用配管施設を行なっている。
パイロット事業
構造改善事業の一つとしてパイロット事業があり、宿毛市では柑橘を主体とした事業として二宮・福良・中山・一生原があるが、みかんの値段が暴落したことにより、事業経営はうまくいっていない。

たばこ耕作が盛んな伊与野付近 構造改善事業で整備された山田の水田 野菜集荷場
たばこ耕作が盛んな
伊与野付近
構造改善事業で整備された
山田の水田
野菜集荷場

農村の将来
農村は農産物の貿易自由化の波にあらわれ農業基本法などにみられるように、大型化、協業化などが行なわれようとしているが農地法に阻まれたり、農地の地価暴とう、農民の財産的意識などに左右されてなかなか大型化はむずかしいが、高収益をあげるためいろいろな工夫がなされ、果樹やそさい園芸、特用作物、畜産などに重点が移り、食糧は輸入に依存する率が増大している。しかし世界的に人口が急増し近い将来、食糧危機の襲来を予告している学者なども多い。このような時期が到来したならば、食糧自給体制にない我が国は困難に直面することが予想されるので、これに対処する道を考えなくてはなるまい。
農業の大型化、協業化は機械力導入による所が多いが、最近の農村は機械化貧乏といわれるように、機械をフルに活用する面に欠ける点があるので、機械の協同利用が望ましいのではないか。
最近は農業の企業化が叫ばれ、会社経営による畜産、果樹園経営がなされはじめたが、農地法がだんだん改正されてくると、企業の農村進出も考えられる。このような事態になると、運営次第では農地改革以前の搾取的な農業もおこるおそれがある。
肥料や農薬の進歩は、農業の進歩に貢けんする所が大であったが、公害問題がだんだんクローズアップされてきており、化学肥料の多投は又地力消耗につながっている。これらを克服する方法を考慮しなければならないだろう。