宿毛市史【近世編-農村の組織と生活‐土地制度】

検地

土地の調査は古く大化改新の時に田籍、田図が作られ、荘園でもそれぞれ検地が行われ、田数帳や内検帳が作られていた。
しかし豊臣秀吉が天下を統一して行なった太閤検地は、同一の規準に基づいて全国的に実施したところに特色がある。秀吉も最初から統一して行なったわけではなかったが、その土地の面積と生産高を知ることによって経済的基盤を明らかにすることができる。そのことは即ち政策の基礎をなすものであった。土地の生産高は石高によって明らかになるのであるがそれ以前の桝はさまざまであったのを天正14年(1586)京桝に定め、1反で何石の米がとれるかをはかり、上中下の等級をつけて今までの貫高制度を改めて石高制度に統一した。
それまで6尺3寸であった検地竿を改めて1間(6尺)とし1間平方を1歩、30歩を1畝、10畝を1反、10反を1町として田畑の面積を明らかにした。従来は360歩が1反であったが、3百歩を1反として全国を統一して検地を実施したのである。しかし土佐では反、代、歩を用いている。天正地検帳も反、代、歩、勺才を使っており、2才が1勺、2勺が1歩、6歩が1代、50代が1反、10反が1町の定めであった。検地竿は6尺3寸であった。宿毛市内の検地は天正17年10月から18年5月にわたって実施されている。
検地の前に秀吉は刀狩令によって農民の武器をとりあげた。一揆を企だてることを防ぐための刀狩りであった。検地によって農民は耕作者として登録農民となった。検地帳に記入されることによって農民の身分が確定されたが、一面では自由を失い、土地に固定される結果となった。帳付農民となることによって農民の運命は決定的となり、藩政時代をつうじて変ることがなかった。
農民は検地帳には耕作者として登録されているが、屋敷のところには登録されていない無屋敷登録人が多くいた。この無屋敷登録人の多くは、屋敷を所有する有力農民の血縁者、被官、名子などで、家長ないし主家の屋敷の別棟、小屋などに住んでいた小農民であるという。主従関係の強い名子は主家と同一の住宅の一部あるいは屋敷内に住居しているのが普通であったし、また二、三男が分家して無屋敷登録人になるものもあったのである。
検地は耕作者の決定と同時に、貢納責任者の確定の意味があった。田地があっても耕作者がなくては田地がないに等しいからである。しかし終局的には年貢は各耕作者の集団として村単位に課せられることになった。従って村高の決定と共に生産物の確実な徴収が主目的であった。
宿毛市の検地は、天正17、8年に行われており宿毛郷川より西(貝塚まで)のところで扣(耕作者)となっている九良左衛門、善左衛門、甚衛門、六良兵衛、左近兵衛、新尉、民部等の屋敷はない。「無屋敷登録人の中に武士的感じの名前がある。これらは村役人層で屋敷の年貢が免除されていたために屋敷に登録されていないとも考えられる。或は他村からの入作であるかもしれない。あるいは武士となって離村した後も田畑を所持していて登録されたものもあったのではなかろうか」(『近世農民生活史』)というが、宿毛の武士的感じの名の人々は前記の外60余人の中で「居」と記されているものは4人だけである。また給地をもっているものも百余人のうちわづかに10人が「居」とあるのみである。山奈村についてみると登録されている360人に対して屋敷持は120である。120人の屋敷持のところへ何等かの形で同居していたとするとほぼ妥当な数といえるのではあるまいか。宿毛川より西の分については「主作」あるいは「居」が書き落されたのでもあろうか。

村上改
村上改

検地の目的は地高を確定すると同時に百姓の田地付をするのが目的であったから、山内氏が入国すると、その翌慶長6年(1601)から7年にかけて検地を行なった。「西寺御寺領分田地並御百姓相渡目録之事、慶長6年10月20日」(『南路志』)とあり、これを手始めとしてほぼ25年毎に検地を行なっている。第2回は村上改といわれているもので、元和8年(1622)から前後4年間にわたるもので、これは新田を主としたものであった。
その他慶安3年の新田検地(1650)、延宝2年の新田并切畑検地(1674)、元禄9年の本田并新田検地(1696)、宝永7年の楮畑検地(1710)、享保9年の新田検地(1724)、明和9年の新田検地(1772)、文政7年の新田検地(1824)と9回にわたって実施されているが、それらの検地の結果を知る資料は発見されていない。和田の庄屋有田善三郎の手扣による弘化5年(1848)の宿毛郷村々地高は次のとおりである。伊賀の知行地全部ではないが、これによって、本田、新田のそれぞれが明らかである。

宿毛郷村々地高(弘化5年、有田文書による)

村 名 本 田(石) 新 田(石) 村上改(石) 堀 明(石)
 宿毛村
 和田村
 二宮村
 中角村
 押ノ川村
 同
 坂ノ下村
 錦村
 小深浦村
 野地村
 木工津村
 宇須々木村
 椛村
 大深浦村
 山北村
 同
 草木藪村
 呼崎村
 大島村
  計
1,170.440
1,134.378
750.630
384.572
1.983
381.133
161.150
167.402
97.815
101.868
116.953
257.756
84.205
238.357
7.910
189.253
38.920
61.100
50.793
5,386.725
237.321
2.157
2.273

18.646


94.868
188.261
6.074
3.883
9.954
73.537
127.789
46.926


17.667
218.015
1,047.370

7.499
3.600







1.513
4.904
2.072
3.267



1.180

24.035




0.117