○宿毛市障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領

令和3年3月31日

訓令第1号

(趣旨)

第1条 この訓令は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、法第7条に規定する事項に関し、宿毛市の職員(臨時的任用職員及び非常勤職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応することに関し必要な事項を定めるものとする。

(不当な差別的取扱いの禁止)

第2条 職員は、法第7条第1項の規定により、その事務又は事業を行うに当たり、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。以下同じ。)を理由として障害者(障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。以下同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

(合理的配慮の提供)

第3条 職員は、法第7条第2項の規定により、その事務又は事業を行うに当たり、別記に定める事項に留意し、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利権益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)をしなければならない。

(管理職員の責務)

第4条 職員のうち課長職以上の地位にある者(以下「管理職員」という。)は、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次に掲げる事項を実施しなければならない。

(1) 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、所属職員に対し注意を喚起し、その認識を深めさせること。

(2) 障害者及びその家族その他関係者から不当な差別的取扱い又は合理的配慮の不提供に対する相談があった場合は、迅速に状況を確認すること。

(3) 前号の状況の確認の結果、合理的配慮の提供が必要と認められた場合は、所属職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

2 管理職員は、所管する事務又は事業に関し、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合は、迅速かつ適切にこれを対処しなければならない。

(相談体制の整備)

第5条 職員から障害を理由とする差別を受けた人及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、総務課に相談窓口を設置するものとする。

2 前項の相談等を受ける場合は、性別、年齢、障害の状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファクシミリ及び電子メールに加え、障害がある人が他の者とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。

(研修及び啓発)

第6条 障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修を行うものとする。

2 前項の研修の内容は、新たに職員となった者に対しては障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について、新たに管理職となった者に対しては障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割を理解させるものとする。

3 職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者に適切に対応するために必要なマニュアル等により意識の啓発を図る。

(委任)

第7条 この訓令に定めるもののほか、必要な事項は市長が別に定める。

この訓令は、令和3年4月1日から施行する。

別記

第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方

法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否すること、又は提供に当たって場所・時間帯等を制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けること等により障害者の権利権益を侵害することを禁止している。ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱い、合理的配慮を提供等するために必要な範囲でプライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。

このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。

第2 正当な理由の判断の視点

1 正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する等の取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈する等して法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者及び第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)並びに事務又は事業の目的、内容、機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的かつ客観的に判断することが必要である。

2 職員は、正当な理由があると判断した場合は、法の趣旨を踏まえ、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。

第3 不当な差別的取扱いの具体例

不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は、次に掲げるとおりである。不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、次に掲げる具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらにそれらはあくまでも例示であり、掲げられている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

(1) 障害を理由に窓口対応を拒否すること。

(2) 障害を理由に対応の順序を後回しにすること。

(3) 障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒むこと。

(4) 障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒むこと。

(5) 事務又は事業の遂行上、特に必要でないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付添者の動向を拒んだりすること。

第4 合理的配慮の基本的な考え

1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。

法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、事務又は事業を行うに当たり、個々の場面で、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。

合理的配慮は、事務又は事業の目的、内容及び機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的、内容及び機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。

2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。

なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。

3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。

また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者、介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。

なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者、介助者、法定代理人等を伴っていない場合等、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑み、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかける等、自主的な取組に努めるものとする。

4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

5 事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めるものとする。

第5 過重な負担の基本的な考え方

1 過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈する等して、法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、次に掲げる要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的かつ客観的に判断することが必要である。

(1) 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か)

(2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)

(3) 費用又は負担の程度

2 職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。

第6 合理的配慮の具体例

合理的配慮に当たり得る具体例は、次に掲げるようなものがある。

なお、合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであることから、あくまでも例示であり、掲げられている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。また具体例においては、過重な負担が存在しないことを前提としている。

(1) 合理的配慮に当たり得る具体例(物理的環境への配慮)

ア 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡す等すること。

イ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡したり、パンフレット等の位置を分かりやすく伝えること。

ウ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて障害者の希望を聞いたりすること。

エ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を出入口付近にすること。

オ 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害者に事情を説明し、長椅子を移動させる等して臨時の休憩スペースを設けること。

カ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりすること。

キ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し、誘導を図ること。

(2) 合理的配慮に当たり得る具体例(意思疎通の配慮)

ア 手話、筆談、読上げ、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。また、見分けやすい配色やコントラストに配慮すること。

イ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体等でページ番号等が異なり得ることに留意して使用すること。

ウ 視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際に、読上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供すること。

エ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認すること。

オ 駐車場等で通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡すこと。

カ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい言葉で説明するとともに、本人の依頼がある場合には代読や代筆(法的に代筆が認められる書類に限る。)といった配慮を行うこと。

キ 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現等を用いずに具体的に説明すること。

ク ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対すること。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記する等の配慮を念頭に置いたメモを必要に応じて適時に渡すこと。

ケ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある委員や知的障害のある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心掛ける等の配慮を行うこと。

コ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行うこと。

(3) 合理的配慮に当たり得る具体例(その他の配慮)

ア 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の人の理解を得た上で、手続順を入れ替えること。

イ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の人の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意すること。

ウ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保すること。

エ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更すること。

オ 障害者等用駐車場がない場合や障害者の来庁が多数見込まれる場合に、通常、障害者等用とされていない駐車区画を臨時的に障害者等用の区画に変更すること。

カ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張により、発作等がある場合、当該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備すること。

キ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認めること。

宿毛市障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領

令和3年3月31日 訓令第1号

(令和3年4月1日施行)