宿毛市史【近世編‐農村の組織と生活‐土地制度】

田地のよぴ方

百姓の耕作する土地について各種の呼び方がある。その成立によるもの、所属によるもの、耕作方法によるものなどそれぞれ異称があって理解に苦しめられる。それを理解するために編述されたものに『土佐国地方慣習手引草』『旧高知藩田制概略』などがあるが、いづれも近世末期のものでその沿革をつまびらかにすることはできない。しかしこれに頼らないで理解することは困難である。参考のために略述しておく。

 地株称号
本田長宗我部氏の天正検地によって定まったもの、その地高は248, 300石余と称されている。山内氏時代に入って開墾や荒廃があってその地高に増減があった。
新田山内氏入国以後に開墾した田地を新田といった。
余田高外の本田で、本田と同じである。
持地本田の荒地を再墾したもので本田荒起の目にも入れず、新田として取扱うが新田高にも入れられないものである。
古堀明本田高より検出したもので開墾の原因不明のものとされている。
総堀明普通の新田のいくつかを合併したもので地分堀明ともいう。
落地古堀明検地に洩れ、後日顕われた土地。
村上改村上八兵衛の検出した新田、村上改は元和、寛永にわたって行われた。
隠田内密に開発保有した土地である。
訴人地隠田を訴えて得た恩賞地。
出作式文政年間新田より検出したもの、その出所によって役知出作式、地面出作式、領知出作式の3種がある。検地に際して森、本山、豊永方面の農民が大さわぎをしたという。
引替上り地寺領、社領、大庄屋給、領知、及び小給等の数種がある。
竹銀立藪開もと銀立籔として竹税を徴収した場所を新田としたもの。
散田竹銀立籔の類で新田化したもの。
御留山底地明伐材禁止の官林を許可を得て開墾した新田。
     右のほかに御郡方裏判物とか、控地買、作式買等の地目がある。

 所属称号
御蔵入本田新田の別なく貢租を官入する土地。
知行上士(家老、中老、馬廻、小姓組、留守居組等の士格)に給付した土地。
給地右に同じ、但し本田の場合にこの語が使用された。
小給士族以外のものに給付された土地で職人給、水主給など。
役知士族の知行外または郷士の領知外に開発した新田で役銀を納める私有地をさす。
地面白札の開墾所有する新田、白札は上士の下位に列する格式で、維新の際上士に列したので地面はすべて役知となった。
領知郷士の開発新田。
大庄屋給給地類似のもので、山分大庄屋に給付したものである。
肩書給庄屋肩書給とも云われ、任地における所務の百分の一を支給された。
寺領寺院給地。維新の改革で引換土地として寺禄に替えた。
社領神社給地。祭祀の費用に供す。
拝領地藩主より特別に拝領した土地。
免許地由緒ある無税地、長岡郡後免、高岡郡土崎などがある。
上り地給人が罪あって没収された土地、召上地とも云う。
差上地役知、領知の類で所務少く、納税の負担に堪えざるもの、又は事故によって官に返還した土地。
伐畑焼畑とも云う。本田外に記載され、無税のものを内伐畑、税納するものを外伐畑という。
塩浜製塩地帯をいう。塩田法によらず釜を使用した。有税のものと無税のものがある。
 耕作称号
くじ地本田割地の法である。10町以上の土地に適用された。土地の上下を平分して番号をつけ、抽籤によって耕作地を配分する方法で、年数は土地によって一定していない。
定持くじ地法を適用しない本田で特定のものが無期限に耕作権をもっている。
盛控他人の土地を耕作して地主に加治子を納め、納税を負担する。従って使用処分の権利がある。
永代宛盛控に似ているが、納租は地主が負担するものであり、従って盛控ほどの権利はない。上士扣、定宛り、くじ宛りの別称がある。
一作宛租税はすべて地主が負担するので作人に処分の権利はない。
引地公用引地ともいう。村役人扶助のために公役を課せざる土地。
永代替両村の境界が混雑して不便であるために、便宜に交換した土地を云う。
中地元公有地のことであるが、また所有地のうちから特に設定したもの。
草刈場山林と田畠の中間にあって、田方より手の届くかぎりは草を刈ることを認められた土地。
窪田ともいう。低地にある田。
あけそり窪に対して高地にあり乾きよい地、あけ窪、そり窪ともいう。
けた山腹の地所。
かうまへ山下の地所。