宿毛市史【近世編‐農村の組織と生活‐農産物】

売買品目

次に掲げるものは『憲章簿』にのせられていて売買について税金を課せられたものである。これらが村々において何程の生産がありまた売上げがあったかは不明である。
  播多郡御境目出諸産物御口銀定帳

1. 仙過紙(一束) 八分七厘 憲章簿
1. 原紙(一束) 四分三厘
1. 半紙(一束) 六厘四毛
1. 大半紙(一束) 一分四厘
1. 煎茶(三十斤入)一丸 九分五厘
1. 油粕(十メ匁) 二分
1. 石灰(一石) 四分
1. 梔(壱石) 一匁四分 憲章簿


1. 青苔(十メ匁) 七分 1. 塩鴨(十羽) 八分五厘
1. 蕨粉(壱斗) 四匁六分 1. 菌類(壱石) 四匁六分
1. 巣密(十メ匁) 七匁 1. 漉密(十メ匁) 五匁
1. 蜜蝋(十メ匁) 十二匁 1. 毛皮類(十枚) 二匁
1. 樟脳(二斗四升入一樽) 一匁 1. 真綿(十メ) 三十匁
1. 菎蒻玉(ニメ匁  一斤) 一分五厘 1. 鶏玉子(百) 七分三厘
1. 棕櫚毛(十メ匁) 二分一厘 1. 五倍子(十メ匁) 二匁七分
1. 曲物類(十ウ) 一分三厘 1. 酢(一石) 八分
1. 太布(拾反) 五分 1. 素緬(十メ匁) 一匁
1. 傘(十本) 二分五厘 1. 批杓(十本) 八厘
1. 附木(十束) 一分四厘 1. 麻苧(壱メ匁) 三分
1. 木綿(十反) 五分 1. 畳(一枚) 一分五厘
1. 鉄釘(壱メ匁) 二分 1. 渋紙(十枚) 一分五厘
1. 鬢付油(百匁) 五厘 1. 本結(百匁) 四厘
1. 酢粕(十メ匁) 一分四厘 1. 味噌(十メ目) 三分
1. 畳床(一枚) 八厘 1. 蕨繩(十把) 五分
1. 庭莚(十枚) 一分 1. 呉座(十枚) 二分
1. 檜笠(十枚) 一分五厘 1. 琉球莚(十枚) 一分七厘
1. 筍笠(百枚) 二分四厘 1. 七島表(拾枚) 八厘
1. 醤油(八斗入一樽) 一分 1. 竹そふけ類(十枚) 三厘
1. 薄縁(一枚) 八厘 1. 菜種(壱石) 五匁
1. 胡麻(一石) 三匁九分 1. かたしの実(一石) 二匁五分
1. ふばの実(壱石) 一匁一分五厘 1. 綿の実(十メ匁) 三分六厘
1. 酒(時の値段を以) 廿分一 1. 松節(十メ匁) 四分
1. 葛粉(一石) 三匁四分五厘 1. 傘柄竹(百本) 一分五厘
1. 磯ふのり(十メ匁) 五分 1. 茅苫(十枚) 三分五厘
1. 古鉄(十メ匁) 一匁二分六厘五毛 1. 貝塩漬(一斗) 三分
1. 松脂(十メ匁) 二分 1. 木実(一メ匁) 六厘
1. 生蝋(百六十匁一斤二付) 三分 1. かづら類(十メ匁) 五分
1. 市皮(十メ匁) 七分七厘 1. ぜんまい(一メ匁) 一分六厘一毛
1. 硝焔十斤、(一斤百六十匁ヲ以) 一匁五分 1. 葉藍(十メ匁幡多郡ニ限) 一匁三分
1. 巻尺長(百) 一分 1. 三稜(三百五十目一斤) 三厘
1. 布(十反) 八分 1. 蒲莚(十枚) 一分七厘
1. こびの粉(一石) 五匁七分五厘 1. 紅花(百匁) 三分五厘
   〆七十八廉        

  諸産物口銀並改所取扱等の事

1. 煎茶(五十斤入壱丸二付但地入用無口)口銀七分 1. 蕨繩(十杷) 四分
1. 蕨粉(一石) 三匁 1. 真綿(百匁) 九分
1. 葛粉(一石) 三匁 1. 菌類(一石但地入用無口) 四匁
1. 紅花(百匁) 三分 1. 古鉄(十メ匁) 一匁一分
1. 綿実(十メ匁) 三分 1. かたしの実(一石) 二匁
1. 筍笠(百枚但地入用無口) 三分五厘 1. 葉藍(十メ匁) 九分
1. 檜繩(十把) 七分 1. 大竹(八寸廻以上一本但地入用無口)六厘
1. 小竹(五寸廻り七寸九分迄但地入用無口)三厘 1. 小呉竹(十本但地入用無口) 二厘
1. 内竹(二尺廻一把但地入用無口)二厘 1. 御国酒(一石但右同断) 二匁五分
1. 琉球(十把) 六分一厘 1. 五倍子(十メ匁) 二匁七分
1. かづら類(十メ匁) 四分 1. 紺灰(一石) 五分六厘
1. 茅苫(十枚) 二分 1. 仙過(紙)(一束)四分三厘八毛
1. 厚紙(一束) 二分一厘九毛 1. 渋紙(一束)二分一厘九毛
1. 清帖(一束) 三分一厘四毛 1. 大半紙(一束) 八厘二毛
1. 小半紙(一束) 三厘八毛 1. 粕大半紙(一束) 三厘八毛
1. 黒清帳(一束) 一分八厘八毛 1. 粕小判紙(一束)一分八厘八毛
1. 漉直中折(一束) 一厘二毛六払 1. 甘粕紙(一束) 五厘七毛
  〆右参拾四廉津口御境目共口銀爾来御定の通り      

以上にあげられている産物のうち現在の宿毛市内で生産されたものが如何程あったかは知ることができない。製紙の原料である楮や三ッ又の生産はあったが、製紙業はなかったのではあるまいか。楮草の買入に指定されたものは中村と有岡にあったが、宿毛にはなかったのである。
出井楠山では櫨実を出井番所を通じて売ることを認められていた。中村まで持ってゆかねばならなかったので百姓が捨ておくことになり番所で壱貫匁に口銀四厘をとり伊予へ売ることを認め(嘉永3年4月)ている。また毛皮類も中村と下田に公認の問屋があったが、地下役が改めて口銀を取り送状を出すようになり、津口御境目を出すことは勝手次第となった。また、菜種、胡麻、荏胡麻、かたし、ふばの実は油を紋るために仕成座があったが、これを廃止し勝手次第(天明6年11月)となった。
土産品
伊賀系譜の中に記されている次のような品物は、やはり宿毛の産物として差支えないのではあるまいか。伊賀氏が藩主に差出した土産品をみると、天明8年4月には篠山氷餅、梨子一籠、文化11年2月には熊引二枚一折、在産矢羽、瑣貝、篠山氷餅、天保10年正月には塩雲雀一桶百差上げとあり、弘化2年10月には御菓子一折、篠山氷餅一折、矢羽十五手、畔鳥一桶五十差上げ、奥向にて蕨餅、御菓子一折、鯣(するめいか)三十連差上げ、文久元年6月には熊引一折差上げとある。
ここには宿毛特産品と云うものはないが、篠山氷餅が何回も出て来る。特に篠山で製造したものがあったのであろうか。氷餅はカキ餅のことであり、凍らしたものではない。