宿毛市史【近代、現代編-農業】

農 業

宿毛市は山あり平地あり、川あり海ありで、地形的な面から農業形態にも多様さをもっている。
中筋地溝帯沿いの平田、山奈地区や各河川流域には水田が発達して、米作中心の農業となっているが、海岸地帯には畑が山上まで開かれ、半農半漁の生活形態をとり、松田川、伊与野川、福良川上流などのような山間の農業は林業が中心で、農業が従となっている。
従って農業の歴史には共通の歴史があると共に、又特色のある歴史を持っているのである。例えば稲作のかんがいにしても、山すそにわき出る水を利用するもの、ため池の水を利用するもの等に分かれるが、これらもわき水とため池を利用するものは、こう水等の被害を受けることは少ないが、干害を受けることが多く、反対に河川利用の場合は、干害には強いがこう水には弱いと言うような特色を持っており、又和田や沖須賀、仲須賀、萩原、与市明のような町に近い所では、商品経済に影響されることが多く、作物でもすぐ換金されるような野菜、果物などが多く作られ、楠山等のような辺地では、自給自足の生活が長く続き、海岸と山奥の気温の変化でも作るものが異ったり、湿田と乾田で利用の方法が違ったりしている。このように多種多様な面を持っているが、又日本の辺地としての共通なもの等も多い。
これらすぺてにわたって歴史的に記述することは、資料に乏しいこと、紙数に制限を受けていること等から無理である。そこで資料に基づき、特色のある事象等を取上げ、歴史の流れをつかむ一考察としたい。