宿毛市

やまずみの人

最終更新日 

その1

昔、宇和田の里に六角屋清兵衛(ろっかくやせいべい)という人が住んでおりました。
清兵衛は、山北正木(やまきたまさき)の山々から材木を切り出し、それをあきなうのが仕事でした。
切り出された材木は、篠川の岸辺のそこそこに集められ、出水をまって、運び出されました。水にのこった材木はおおかた二ノ宮口(にのみやぐち)から 河戸(こうど)をすぎ、中市に集められ、船づみされていたのでしょう。
そんな仕事ですから、たくさんの人々をやとっていました。
ある年のこと、御在所(ございしょ)の上手で仕事をしている最中、思わぬ大雨にみまわれ、折角集めた材木が 押し流されてしまいそうになりました。


その2

ばらばらに流されてしまってはたまりませんので、人夫(にんぷ)達は必死でそれをくいとめようとしました。
なに分増水がはげしく、これ以上くい止めることは無理だとみた人々は、川に入って作業している人達に早くあがって来るように大声で さけびかけました。そのあいだにもどんどん水かさが増して来ます。
あっという間でしたが、なんと七人もの人がその水に押し流されてしまいました。
残った人々や急を聞いた里人達は、下手に向かって走りながら、なんとか助けようと必死になりました。


その3

川幅はせまいといってもなにぶん急な流れのことですから、始めのうちこそその姿も見えかくれしていましたが、 そのうちとうとう、見えなくなってしまいました。
雨のあがったあとのこと、悲しいことに七人共、なきがらになって見つかりました。清兵衛はじめ、みんなで現場 近くでそのなきがらをほうむりました。土地の人達はそのお墓を七人墓と呼びました。
それからしばらくたったある夜のこと、昼間のつかれでぐっすり寝ていた清兵衛は、ふとした気配で目が覚めました。不思議なことに先日ほうむったはずの一人が枕元に立っているのです。そうして、
「私の大事な煙草入れを忘れているのでもらいに来ました。」
と、言うのです。


その4

なるほど、と気のついた清兵衛は朝になるのをまちかね、早速に煙草入れをお墓に納めるために出かけました。
宇和田から御在所までといえばかなり離れてもおるし、そんなこともあったりで、朝晩の供養も思うように出来にくいからと、清兵衛は家の近くに塚を建て、七人の霊を長くとむらい続けたということです。
清兵衛は、山の仕事の一方で田畑を開くことにも力を入れ、掘り取った土一升(いっしょう)に米一升をだすような難工事に私費(しひ)をつぎこむなど、その生き方は今に言い伝えられていますが、そのことはまたのおりにでもいたしましょう。
その六角屋清兵衛は、今も静かに宇和田の里の一隅に眠っています。

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