ドンコといってもすぐには判りかねる人もおられるかも知れません。ゴソと言ったらどうでしょう。川魚の口の大きな魚です。
歯のきつい魚でたいていのときは岩の下とか穴にかくれていますが、獲物をねらって出てくると カワムツやオイカワ、たいていひっくるめてハヤンボと呼んでいる様ですが、これなんか頭からがっぷりと呑みこみます。
一口に呑みこんでしまうことの出来ない大きな獲物の尻尾の方を口から外に出したまま、川ぞこでじっとしている姿をみかけることもあります。
海の魚のカサゴの仲間、タケノコメバルやガシラと呼ばれるものなど、あれこれひっくるめてホゴと呼ぶ人が多い様に思いますが、それらに似た様な魚と言う人もおりますがなかなかおいしい魚です。
農薬なんかの影響からでしょう。松田川でも一時ほとんど姿を消していましたが、最近又ふえて来ました。
谷川の奥でウナギ釣りをしていると、思わぬ程の大物がかかって来ることがありましたが、最近そんな大物にお目にかかることはできません。
このドンコ、岩肌なんかに卵を産みつけるとそれが小さなドンコになって出て来るまで、その近所で必ず見守っているのです。
小さな粒々の卵が産みつけられると、それをねらって今度はハヤンボなどが集まって来ます。
このふとどき者とばかり親ドンコは水ぞこからすうっと泳ぎあがって縄張りを荒す他の魚に体当たりするのです。
ハヤンボの鱗がきらきら光りながら落ちてゆきます。なかにはしばらくふらふらしながら泳いでいるうち、とうとうもとに戻らずに水面に浮かびあがってしまうのも出て来ます。
こんなに強い体当たりがよく出来るものだと思われる程ですが、こうして卵をまもっているのです。
それでも岩の下などにそっと産みつけたときは別でしょうが、見つかる様な所ではなにぶん相手が大勢ですから全部の卵を守りきることはなかなか出来ません。ほんのすこしが子どもになるのですが、それでもおしまいまで頑張って守ってゆくのです。
この号が出る頃にはもう時期がすぎて、卵を産みつけている所をみつけることは出来ないと思いますが、来年でも春から夏にかけての頃気をつけてみて下さい。きっとこんな様子を自分の眼でたしかめることが出来ますよ。
自然界というものは見れば見る程おもしろいものですねえ。